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「失敗しない電子帳簿保存法対策、猶予措置(期間)で何をどう準備する?(第2回) 」 (全3回)

前回の第1回目コラムでは、中小企業の皆様にとって、電子帳簿保存法の何がわかりにくく、ネックになっているのか、対策の方向性について解説し、その対策を最短距離で失敗しないようにするために、経理と現場の両面からの全体最適な視点で検討を進めていくことが重要であることを説明してきました。
また、注意すべき点として、2024年1月からからの猶予措置(期間)においては、すべてが猶予されるわけではなく、電子データ自体を保存するとともに、その電子データ及び出力書面について提示又は提出をすることができる必要があることも説明してきました。

今回の第2回目コラムでは、2024年度からの猶予期間において、具体的に何をどのように検討していけばよいのかについて、自己診断チャートなども使いながら具体的に解説をしていきます。
運用システムを選定したら準備完了ではありません。具体的に自社の課題分析と運用方針を定め、組織で共有し、その上で運用システムを選定していくことが、失敗しないためにとても重要になります。

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1.STEP123で運用準備

最初に自己診断チャートで、おおまかに対策の方針パターンを確認いただけます。
そのあとは、その方針にそって、STEP123と順番に確認、検討を進めることで、皆様の会社に一番合った、電子帳簿保存法の対応を最短距離で可能にできます。
下図に検討のイメージを示しています。
自己診断チャートで自社の対応パターンを確認し、STEP1ではおおまかに取組みの方針を定め、STEP2で現状の取引を整理し、STEP1の方針とのギャップから課題を明確にして、最後にSTEP3で自社の運用ルールを定めていきます。
さっそくはじめてみましょう。

2.自己診断をしてみよう(自己診断チャート)

最初に下図の自己診断をやってみましょう。各設問で、イエス、ノーを答えて進めることで、診断パターンがわかります。おおまかな対応の方針を確認していきましょう。

下図の診断の結果から、対応の方針を確認していきましょう。診断パターン2の場合は、書類を扱う人や取引書類数、取引先のどれかが比較的多いパターンです。
その場合は、電子化を睨んだ運用方針を定め、だれもが簡単に使え、軽快に運用できる電子化帳票保存の運用システムを活用することがお薦めです。
診断パターン1の場合は、2024年1月以降は猶予措置になり、最低限この条件を満たす必要があることをご留意ください。繰り返しになりますが、宥恕(ゆうじょ)措置では紙保存が認められていたのに対し、猶予措置ではダウンロードの求めに応じなければならないことに注意ください。
診断パターン3の場合は、システム導入のコストに見合う効果を出していくために、システム導入の前にしっかりと運用設計を行うことがとても大事になります。

自己診断結果の解説です

診断の結果から、おおまかな対応の方法を確認していきましょう。

3.STEP1 方針の策定をはじめましょう!

診断結果で確認した方針の方向性を参考に、自社の対応の方針を決めていきましょう。最初に現状の姿を俯瞰し、課題を確認して、次に電子化の大きな方針を書き、期待効果を示していきます。

この段階では、あくまでも大きな方向性を方針として纏めます。例えば、現状が取引において紙の帳票が多い場合、方針としてペーパレス化の促進による生産性向上とし、課題は帳票の保管スペースの増大や探す手間が大変等をピックアップし、期待効果として通信費や保管コスト削減、業務のスピード化、高付加価値化等があげられます。
経営者の視点からは、テレワーク等の働き方改革や生産性向上の視点で方針を定めていくことがとても重要です。
現実的にどの範囲で、どういう優先順位で進めていくかに関しては、STEP2の自社の取引状況の棚卸の結果を見ながら、現実的な取組みを精緻に決めていきます。

4.STEP2 自社の取引状況の棚卸をやりましょう!

次に下図に示すように、自社の取引状況について、取引先別に情報の授受、そのあとの処理手順を現実のデータを確認しながら、棚卸表などを使い課題を整理していきます。
そのうえで将来のありたい姿を整理していきましょう。
このSTEPを精緻に行うことで、自社に合った具体的な対応が明確になります。課題の対策については、優先順位を定め、無理なく段階的に着手していくことも考えていきましょう。

下の図は、棚卸整理表の例です。顧客や取引先へ販売するうえで授受した帳簿などの書類と、取引先から仕入れで購入した際に授受した帳簿書類を取引先毎に整理していきます。
取引先毎に取引の状況が異なることがあれば、それも合わせて整理していきます。
その中でSTEP1で定めた方針に対する課題を整理していき、改善の方針を具体的に纏めていきます。

5.STEP3 自社の運用手順を決めましょう!

次にSTEP2で整理した内容をもとに、電子データの保存方法を決定し、また電子データの保存場所を決定し、運用の業務フローを作成していきます。
業務フローにて定めた事務処理の内容を運用規定に定義していきます。
自社の運用方針を定めて、社内と取引先にしっかりと浸透させることが重要です。
そのための社内啓蒙は絶対に欠かすことはできません。社内で推進チームを作り、検証と合わせ活動の啓蒙していくこともよいでしょう。

運用手順を定めたら、下の図の運用チェックシートを活用し、最終確認をしましょう。自社で定めた運用規定について、漏れがないかをチェックできます。

6.効果を出すための5つの注目ポイント

ここから、運用方針に漏れがないかを検証し、最終的に運用を決めていくにあたっての大事な注目ポイントを、注目ポイント①から⑤まで紹介していきます。

注目① 電子保存する対象(範囲)と方針を明確にすること

この範囲が不明確な場合、結果的に電子情報と紙の両方で運用することになり、以前よりも業務負荷が増えたということになりかねませんので、必ず明確にしていきましょう。

注目② 電子保存の措置を明確にすること

真実性の確保のため、電子取引の4つの保存措置のうち、どの保存措置を採用するかを決める必要があります。
基本は、運用システムを活用するにしても、事務処理規程を備え付けて運用することです。
訂正削除履歴が残るシステムを利用する場合、保存だけではなく、データの授受も人を介さずシステム内で行う必要があり、取引先も同じシステムを利用するなど、現実的には運用が難しいと考えられます。
また、タイムスタンプの付与についても、スタンプの費用がかかるだけでなく、運用上の課題もあります。よって運用システムを活用するにしても、何らかの事務処理規程を定めて運用をしていくことになります。

注目③ スキャナー保存の対応を明確にすること

現時点では、取引先から紙での請求書等を受領した場合、紙だけの保存も可能な区分ではあります。
スキャナーでの電子保存を行う場合、その要件に真実性の確保と、可視性の確保があり、それぞれ細かい要件があります。
可視性の確保においては、帳簿との相互関連性を確保する必要があり、取引伝票番号と紐づけするなど、運用手順を定めていくことが必要になります。タイムスタンプの付与もしくはバージョン管理については、基本は、事務処理規程を備え付けて運用することをお薦めします。
現状の取引において、紙の帳簿がゼロでない以上、スキャナー保存の対応をどうするかは悩ましいことかもしれません。
運用においては、複合機やスキャナー等と親和性の高い運用システムの選択も考慮したほうがよいでしょう。

注目④ 取引ごとの帳票の関連付けについて、どのようにするか確認すること

この関連付けをしないと、後で帳票の抜け漏れが発生しかねません。
伝票番号などを共通の情報として、各帳票へ入力して電子保存すれば、あとで伝票番号で検索し取引ごとの全部の帳票を確認することができます。

注目⑤ 効果目標を明確にすること

電帳法の対応をきっかけにして、あなたの会社でのペーパーレス化による業務効率化、テレワーク等のワークスタイル変革につなげ、働きかた改革による高付加価値の創造につなげていきましょう。

また、最初の自己診断チャートの結果や、STEP2で整理した課題と改善方針をもとに、活用する運用システムも検討していきましょう。一般的にシステム導入における課題は、下記のようなものがあります。

  • 導入したシステムが使いづらく業務効率が悪い
  • ワークフローの設定などの運用がたいへん
  • システムの社内教育や保守のコストがかかる

以上から運用システム選定のポイントは下記のとおりです。

  • 操作が直感的で分かり易く、誰でもすぐに運用でき、ペーパーレス化が可能であること
  • 後述する情報のフロー管理とストック管理、その連携が可能なこと
  • システムのワークフローの設定などの運用が簡単であること
  • 初期投資が安いこと(費用対効果が高いこと)
  • 結果として、かんたんに無駄なものが削減(レス)でき、生産性の向上に寄与すること

7.真に生産性向上のために準備すること(経理の視点と全体の視点)

これまで電子帳簿保存法の対策について、具体的に何をどのように検討していけばよいのかについて解説をしてきました。
忘れていけないことは、第一回コラムにおいて解説した、経理の視点と全体の視点の両面からの全体最適化です。
具体的には、組織全体として見た場合、電子帳簿保存法の経理業務の電子化と同時に、発行部門の知識や情報資産の共有を行い、その二つを連動させることで組織全体としての電子化の効果が生み出されることになるということです。
すなわち、真に効果を生み出していくためには、電子帳簿保存法対応として、経理と現場の両面から全体最適な視点で検討を進めていくことが重要であるということです。

下の図は、電子帳簿保存のフロー処理は機能しているものの、帳票を登録する営業組織内での情報共有のしくみが無い状態を示しています。
つまり、組織やチームでの情報共有のしくみがない場合、登録からフロー系だけ電子化対応をしても、ルールに基づき登録するだけで、相変わらず多くの仕事が属人化され、組織としての情報資産が共有・再利用ができていないため、登録者自身が電子化の大きなメリットを感じられず、組織としても低い生産性の状態にあります。

それでは、どのような状態が全体最適化されて組織として生産性が高い状態でしょうか?下の図は、製品サービスを顧客へ提案する企業において、全体最適化が図られた例をモデルとして示しています。

図の左側が電子帳簿保存のワークフロー等の情報のフロー処理を示し、右側は顧客との取引における、顧客やマーケットの調査分析、企画立案、チームの活動状況、書類原本等の組織における重要な情報、ノウハウ、ナレッジのストック、再利用の状態を示しています。
情報のフロー処理では、主に「スピードや鮮度」が重要視され、ストック処理では、属人的な業務はなく、「組織で蓄積してきた情報やナレッジを組織が再利用」しながら、「業務やタスクの見える化」を果たし、知識の再利用で効率的で高付加価値な業務を行うことが重要視されます。

下の図は、チームでの情報共有をフォルダー内で行っている具体例です。
フォルダー構成を恣意的に作成することで、どこに何の情報があるかが、誰もがわかりストックされた情報を必要に応じて閲覧したり、再利用することが可能になります。
もちろん前提として、だれに何の情報を公開するのかのアクセス権の設定は必ず必要になります。

高度な検索エンジンを用意すれば、このようなフォルダー構成などを設定せず、必要な情報を探せるといった見方をされる方もいらっしゃいますが、その場合、チームとしてどのような情報が必要で、どのように作成するのかといった情報作成、管理の共通ルールがないために、チームとしての知識活用に限界があることを留意しておく必要があります。

このような共有情報をクラウド上に格納すれば、テレワークや外出先での機動的な業務処理や災害時の重要情報の保護などのBCP(Business Continuity Plan)対応などの実質的効果が創出できると考えられます。
ポイントは、このような情報のストックとフローが有機的につながり、結果として大きな生産性を生み出すことです。

「労働生産性」=業務効率化(フロー)×高付加価値化(ストック)の視点から、生産性向上を図ることが大事なことになります。下の図に「労働生産性」が高い状態を示しています。

この具体的な事例として、経理部門での生産性向上の例を紹介します。
経理業務は専門性の高い分野であるため、限られた人員で業務を任されている方が多く、特定の担当者に業務が集中するなど、属人化と圧倒的人材不足があります。
改善例では、労働集約的な作業を電子化によるフロー処理で効率化を実現し、次にインボイス制度などの法の改正への速やかな対応や、本来のコア業務である「管理会計」の強化を組織の蓄積したナレッジ活用で進め、限られた人員で高付加価値業務へのシフトを実現することが可能になりました。

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8.まとめ

今回の第2回目コラムでは、2024年1月からの猶予期間において、具体的に何をどのように検討していけばよいのかについて、自己診断チャートなども使いながら具体的に解説をしてきました。
特に組織全体として情報のストックとフローの観点から、電子帳簿保存法の経理業務の電子化のフロー処理と同時に、発行部門の知識や情報資産の共有といったストック処理が重要で、その二つを連動させることで組織全体としての真の電子化(ペーパーレス化)の効果である生産性向上が実現されることを説明してきました。
企業の働き方改革、生産性の向上の視点を忘れないようにしましょう。

次回の第3回目コラムでは、具体的な運用ツール(GO!!電帳)において、フロー処理とストック処理がどのように連携して効果を生み出していけるのかを解説していきます。
ぜひとも、全3回のコラムをお読みいただき、「電子帳簿保存法」対応はもちろん、DX化による業務の効率化に向けて第一歩を踏み出しましょう。

以下の資料も参照してみてください。

本コラムは、ユーエスエス編集部がお届けします。

JIIMA認証を受けたGO!!電帳を提供するユーエスエス

ユーエスエスグループで開発する製品は、電子化・業務改善システムが多くあり、グループ累計で5000社以上の企業で利用されています。

文書情報管理士を取得した当社スタッフがコラムを監修し、電帳法・文書管理等の情報を発信しています。

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