電子化のポイント「Q&A」
近年、IT化などの推進により、企業における業務の電子化が進んできています。しかし、電子化導入時にコストや手間などがかかるため、導入をためらっている企業もあるのではないでしょうか。今回は業務を電子化する際のポイントについて解説したいと思います。
1.電子化とは?
まず初めに、業務の電子化に関する基本的な事項から確認していきたいと思います。
電子化とは、紙に記された情報を電子データの形に変えていくことです。
企業においては、営業資料や帳簿書類など、もともと紙で印刷されていた物をExcelファイルやPDFファイルなどの電子データとして保存するようにすることで、印刷代等のコスト削減を図ることができます。
またそれらの書類データを電子データのままやり取りすることを「電子取引」と言います。
電子化はなぜ必要なのか?
そもそも、なぜ今、業務の電子化が必要とされているのでしょうか?
まず紙書類を無くしていくことによって、文書保存のための費用を削減でき、紙の原材料となる森林を守ることに繋がります。
従来は紙ベースでの保存が義務づけられていた文書も、「e-文書法」や「電子帳簿保存法」などの法改正により、電子文書として保存することが可能になりました。また、2019年4月から政府が提唱する「働き方改革」の具体策の一つとしても、企業の業務の電子化が含まれています。近年のリモートワークの増加により、どこにいても閲覧・編集のできる電子文書の必要性はますます高まってきているため、業務の電子化は今や、企業にとって必要不可欠の課題であると言えます。
2.電子化のメリット
業務を電子化することで、具体的には以下のようなメリットがあります。
ペーパーレス化によるコスト削減
企業におけるペーパーレス化のメリットのひとつに、まずコスト削減が挙げられます。
多くの場合、文書を紙で管理していると、以下のようなコストが発生しています。
- 紙代
- 印刷代
- 印刷機器のリース代・メンテナンス費用
- 文書の郵送・運搬費用
- 文書の廃棄費用
- 人件費 など
ペーパーレス化によって、これらのコストを減らすことができると考えられます。
業務効率化
次に、電子化によって業務の効率化も可能になります。具体的には以下のような効率化が可能になります。
文書作成の効率化
電子化によって、事務作業の効率化を図ることができます。
紙の文書では、文書作成時に誤字や脱字などが発生する度に、文書を一から作成し直さなければなりませんが、電子化することで、文章や文字を間違えても後から修正をすることが容易になります。またツールの導入などを行えば、入力項目を自動チェックすることもできます。
社内稟議の効率化
社内で稟議を行う場合、紙の申請書や稟議書を使用する場合は、承認者や決裁者の元へ文書を手渡ししたり、他部署へと運んだりする際に手間がかかります。
システムの導入などにより、電子決裁ができるようになれば、ネットワークを介して文書をやりとりできるので、オフィスにいなくても社内稟議をスムーズに行うことができます。
文書管理・保管の効率化
電子化によって、文書そのものの管理・保管の効率化をすることができます。
紙の文書を管理・保管する場合、文書を種類ごとに分けてファイルに入れ、ラベルを貼って保管場所へ収納する、などの作業が発生します。
また文書を使用する際には、そのように保管された大量の文書の中から、必要な文書を探し出す必要があります。
文書を電子化していれば、物理的なスペースを使用することがないため、必要な文書を検索することが容易にできます。
また、文書を紛失・汚損するリスクに備えるという点でも、メリットがあります。
リモートワークがしやすくなる
文書を電子化することにより、編集や閲覧、押印などのために紙の文書をわざわざ会社に取りに行ったりせずに済みます。また、複数人で資料を共有できるため、自宅や取引先などから会議に参加するともできるようになります。
資産の確保
紙の文書を保管するためには、保管場所が必要になります。文書を保管するための場所の確保の他にも、文書を収納するためのキャビネットやラック、ファイルや保管箱などの備品も揃えなければなりません。キャビネットが大きければ、転倒防止用品なども必要になります。
保管する文書の数が膨大になればなるほど、これらの備品を用意する費用の負担も増大していきます。
ペーパーレス化によってこれまで発生していた保管費用が不要になり、保管場所のスペースを別の目的に活用することもできます。
たとえば、自社の社員のリフレッシュスペースや会議室にしたり、シェアオフィスとして他社の社員に貸し出すといった活用方法もあります。
セキュリティ強化
紙の重要書類の情報漏洩を防ぐには、鍵のかかるキャビネットを用意するなどの対処が必要になります。また、書類の持ち出し方法や廃棄方法など、全ての社員にルールを徹底させなければなりません。
その他にも、紛失や盗難、汚損や、紙の経年劣化などで書類を失い、復元が困難になってしまうといったリスクもあります。
書類を電子化しておけば、重要な書類にはパスワードをかけることができ、また担当者ごとにアクセス制限・閲覧制限をかけることもできるため、より細かくリスク管理をすることが可能になります。
また、電子化された書類は劣化しないため、何度でも出力することができます。もしも個人のパソコンが壊れてしまっても、サーバー上にバックアップがあれば復元することもできます。
企業価値の向上
ペーパーレス化を進めることは、紙の消費を抑えることになり、森林伐採を減らします。
森林を保護することは地球温暖化を防止するために役立ち、環境保護活動の一環でもあります。
このように、ペーパーレス化を推進するということは、これからの持続可能な社会を目指すうえで必要不可欠なことであり、そのような取り組みを実践することで、企業としての社会的価値を高めることにもつながります。
3.電子化のポイントQ&A
Q1.どんな書類が電子化対象になる?
A1.電子帳簿保存法の対象になるのは、国税関係帳簿書類です。
国税関係帳簿書類とは、国税関係帳簿+国税関係書類のことです。
具体的には以下のような書類が該当します。
- 国税関係帳簿
仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳、固定資産台帳など - 国税関係書類
決算関係書類(貸借対照表、損益計算書)
契約書、発注書、納品書、請求書 など
Q2.電子取引とは?
A2.「電子取引」とは、「取引情報のやり取りを電磁的方式で行う取引」のことを指します。
電子取引における取引情報の保存については、電子帳簿保存法第10条に定められており、具体的には、以下のような取引が該当します。
- システム等を利用し、ネットワーク経由で書類をやり取りする取引
- ECサイトなど、インターネットを経由して書類をやりとりする取引
- 書類データを添付した電子メールによる取引
Q3.メールで来た請求書は電子帳簿保存法の対象になる?
A3.メールで届いた請求書は電子帳簿保存法の対象になります。
メールを使用した取引は、電子帳簿保存法における「電子取引」に該当します。
そのため、請求書だけでなく、契約書や見積書、発注書、領収書、送り状など、その取引に関わる全ての書類が電子データ保存義務の対象となります。
Q4.FAXは電子取引に該当しますか?
A4.FAXは使用する機能により、電子取引に該当するかどうかが異なります。
書面をスキャンして送信し、それを書面で受領する場合は、書面取引という扱いになります。一方で、複合機などのFAX機能を介してデータを送受信する場合は、「電子取引」に該当します。
Q5.見積書がメールで届き、請求書が紙で届いた場合、保存はどうなる?
A5.メールで届いた見積書は「電子取引」に該当するため、電子帳簿保存法にしたがって電子保存する必要があります。
一方、紙で届いた請求書は電子取引に該当しないため、紙で保存することが可能です。
同じ取引の流れの中であっても、受け取る形式により、保存方法が異なります。
Q6.電子帳簿保存法とe-文書法の違いとは?
A6.電子帳簿保存法とe-文書法で大きく異なるのはその適用範囲です。
電子帳簿保存法は財務省・国税庁が管轄する法律が対象ですが、一方、e-文書法は複数の監督省庁が管轄する約250の法律が対象になります。
そのため、e-文書法のほうが対象となる書類は多くなります。
また保存に必要な要件も異なります。e-文書法では、電子化をするにあたって、「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」という基本的な4つの要件があります。
一方、電子帳簿保存法では「真実性の確保」「可視性の確保」という2つの要件があります。
それぞれの対象となる文書に応じて、要件を確認しなければなりません。
Q7.電子取引の保存期間は何年間?
A7.帳簿書類は、紙による保存、電子保存のどちらの場合でも、一定の保存期間が定められています。
紙の場合と電子保存の場合とで保存期間が変わることはありません。たとえば帳簿書類の保存期間は、法人の場合、確定申告書の提出期限翌日より7年です。電子取引の場合は電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで過去7年分のデータを保存しなければならないということになります。
また、青色申告で欠損金の繰越控除を受ける場合は、帳簿書類の保存期間は最長10年まで延びます。
Q8.自社サーバーで保管してもいい?
A8.電子帳簿保存法の保存要件を満たすことができれば、可能です。
具体的には以下の要件に注意する必要があります。
真実性の要件
以下の措置のいずれかを行うこと
- タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
- 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)
- 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
- 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う
可視性の要件
- 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
- 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
- 検索機能を確保すること
保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索機能不要
これらの要件を自社だけで満たすことが難しい場合は、要件を満たすことの出来るシステムを利用するのがおすすめです。
Q9.電子取引の電子保存が義務化されるのはいつから?
A9.2022年1月からは、既に電子取引にかかる情報の電子保存が義務化されています。
Q10.2年間の経過措置中(2024年1月まで)に何をすればいい?
A10.2022年4月以降は、電磁的記録の条件を満たせないやむを得ない事情がある場合には、従来通りの方法で処理することが認められています。それまでの間に、電子化に向けた取り組みを行い、2024年1月の猶予期間の終わりに備えなければなりません。
また、この電子化を行えないやむを得ない事情については、税務署への事前の届け出は必要ありません。
Q11.2年間の経過措置が認められる「やむを得ない事情」とは?
A11.「その時点までに要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難な事情等が該当する」こととされています。(「電子帳簿損法一問一答」問41-3(参考1))
適用にあたっては、税務調査の際などにやむを得ない事情について確認されることがあるため、現在の対応状況や、今後の電子化の見通しなどについてまとめておく必要があります。
4.まとめ
これまで、業務の電子化にまつわるメリットや、電子化のポイントについて解説してきました。電子化にあたり考慮すべき点が多くあり、対応に時間がかかったり、難しいと感じる場合もあるかと思います。
その際は、電子帳簿保存法に対応したクラウドサービスやシステムなどを利用することもできます。
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