企業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例
近年、環境意識の高まりとともに、「カーボンニュートラル」の取り組みを進めていく企業が増えています。
この記事では、カーボンニュートラルの基本知識と、その実現のためにそれぞれの企業が行っている取り組みについて、具体的にご紹介していきます。
1.カーボンニュートラルとは?
近年問題となっている、地球温暖化の原因となる温室効果ガスには、CO2(二酸化炭素)をはじめ、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどのさまざまな物質があります。
「カーボンニュートラル」とは、これらの温室効果ガスの排出を、「全体としてゼロ」にするという意味です。
これらの温室効果ガスの排出量を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、温室効果ガスの「排出量」と「吸収・除去量」を「差し引きゼロ」にすることを目指そうということなのです。
「吸収・除去量」は、たとえば、植物によるCO2の吸収や、CO2を除去する技術等を利用することで増やすことができます。
なぜカーボンニュートラルに取り組むのか?
2020年より、気候変動問題に対する国際的な枠組みである「パリ協定」の本格運用が開始されました。
このパリ協定では世界共通の目標として、産業革命以降の地球の気温上昇を1.5℃以内に抑えることや、主要排出国を含む全ての国がCO2の削減目標を提出・更新していくことなどが設定されています。
今、世界全体として、カーボンニュートラルに取り組んでいくことが求められているのです。
2.企業とカーボンニュートラルの関係
ここからは、企業とカーボンニュートラルとの関係について、解説していきます。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット
カーボンニュートラルに取り組むことは、各企業にとっても大きなメリットがあります。たとえば以下のような点が挙げられます。
- コストの削減
- 企業の信頼性・イメージ向上
- 資金調達の面で有利になる
企業がカーボンニュートラルに取り組む方法
企業がカーボンニュートラルに取り組む方法としては、基本的に以下のような方法が挙げられます。
- 省エネルギーの推進
- ペーパーレス化
- 再生可能エネルギーへの切り替え
- ネガティブエミッション(大気中から二酸化炭素を除去・削減する技術)
- カーボン・オフセット(削減しきれなかった二酸化炭素排出量のぶんだけ、環境保護活動をおこなって埋め合わせをすること)
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3.国内企業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例6選
ここからは、それぞれの企業において実際におこなわれている、カーボンニュートラルの取り組み事例について紹介していきます。
三井不動産
三井不動産グループでは、「グループ環境方針」のもと、環境問題について以下の3つの方針を掲げています。
- 環境負荷の低減(Load reduction)
- 安全・安心、快適性の向上および持続可能性の確保(Quality improvement)
- 様々な主体との多様な連携・協力(Cooperation)
特に脱炭素社会実現へ向けて「グループ全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに40%削減(2019年度比)」「2050年度までにネットゼロ」という目標を設定しています。
具体的には以下のような取り組みをおこなっています。
- 新築・既存物件における環境性能向上
新規物件でのZEB/ZEH水準の環境性能を標準化、既存物件では計画的なリニューアルによる物件の省エネ性能向上・オンサイトでの再生可能エネルギーの創出を積極的に推進 - 物件共用部・自社利用部の電力グリーン化
全国の保有物件の共用部および自社利用部の電力を2030年度までにグリーン化する - 入居企業・購入者へのグリーン化メニューの提供
グリーン化メニューの提案をおこない、入居企業や購入者も脱炭素に向けた取り組みをおこなえるよう、間接的にサポートする - 再生可能エネルギーの安定的な確保
2030年度までに総発電量3億kwh/年のメガソーラー開発を目指す。 - 建築時のCO2排出量削減に向けた取り組み
建築時のCO₂排出量を正確に把握するツール整備をおこない、さらに建設会社等に削減計画書の提出を義務化することで、サプライチェーン全体でのCO₂排出量削減を推進する。
そのほかにも、森林活用やインターナルカーボンプライシング(ICP:社内炭素価格制度)の導入など、幅広い活動をおこなっています。
阪急電鉄株式会社
阪急電鉄では、環境について以下のポリシーを掲げています。
“阪急電鉄は、「地球環境の保全は人類共通のテーマであり、より健全な地球環境を次世代に引き継ぐことが私たちの使命である」との認識にたち、企業活動を通じて地球環境の保全に努め持続的発展が可能な社会づくりに貢献します。”
具体的には以下のような取り組みをおこなっています。
- カーボンニュートラルステーション(摂津市駅)
「摂津市駅」では、日本初の『カーボン・ニュートラル・ステーション』として、駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにする取り組みをおこなっています。
たとえば、太陽光発電、LED照明、エレベーター回生電力利用、ヒートポンプ式給湯器、雨水利用の導入により、CO2排出量をできる限り削減し、直接的に削減困難な部分については、カーボン・オフセット(※)により、駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにしています。 - 車両におけるCO2排出量削減
車両についても、省エネルギー車両を導入して使用電力を削減しています。
たとえば、回生ブレーキ(ブレーキ時に電動機の回転力を活かし、発電機として使用する)車両を導入し、ブレーキ時に電力を架線に返すことで、他の加速中の列車の電力として使用することができます。
また、軽量車両を導入して少ない電力で車両を動かせるようにしたり、LED照明の導入や、昼間の車内灯を消灯するなどの取り組みもおこなっています。
クーラーや車内灯等に使用する補助電源装置は、GTOやIGBT等の半導体素子を用いた静止インバータ装置を使用することで、従来の電動発電機に比べ変換効率が約15%向上しています。
※カーボン・オフセット
削減が困難なCO2の排出について、他の部分で埋め合わせをするという考え方。
たとえば他団体におけるCO2削減への投資をおこなうなどの方法がある。
セコム株式会社
セコムでは、2030年度までに温室効果ガス排出を2018年度比で45%削減し、2050年までに温室効果ガス排出をゼロとする目標を掲げています。
グループ全体で所有する9000台を超える車両を1台ごとに管理しており、これらの四輪車両を2030年度までにすべて電動車にし、2045年までには二輪を含む全ての車両を電気自動車・燃料電池自動車にすることを目指しています。
また、温室効果ガス排出量の約70%を占めるオフィスの電力使用を削減するための取り組みもおこなっています。
たとえば、省エネ機器の導入が挙げられます。
オフィスで使うコピー機、スキャナー、プリンター、ファクシミリの4つの機能を1台に集約した複合機を全社的に導入して、使用スペースや電力使用量を抑えています。
さらに、社員ひとりひとりの意識を高めるための取り組みもおこなっています。エネルギー使用量を正確に把握できる独自のシステムを構築したり、環境推進委員会を全国に設置して空調・照明などの運用を定めたガイドラインを定めるなど、全社で節電・省エネに取り組んでいます。
三菱重工エンジニアリング株式会社
三菱重工グループは2040年カーボンニュートラル宣言『MISSION NET ZERO』を発表し、脱炭素分野におけるリーダーとして、気候変動対策をおこなっていくことをミッションとしています。この宣言では、バリューチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにネットゼロにすることを目標に掲げています。
三菱重工エンジニアリングでは、自社の独自技術によるCO2回収をおこなっており、三菱重工グループ内でのCO2回収関連製品・サービスの開発にも技術面で協力しています。
顧客のニーズに合わせてさまざまなCO2回収技術の拡大を検討しており、特に近年では、大気中に存在する微量のCO2を回収する「DAC」と呼ばれるシステムなどについても開発を進めています。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイグループでは、『GREEN CHALLENGE 2050』という環境宣言をおこない、豊かで持続可能な社会に向けて取り組んでいます。
CO2排出量削減においては、2030年にグループの店舗運営に伴う排出量を30%削減(2013年度比)、2050年にはグループの店舗運営に伴う排出量を80%以上削減(2013年度比)することを目指しています。
具体的には以下のような取り組みをおこなっています。
- エネルギー循環型店舗の実現促進
オリジナル蓄電池を活用したEMS(エネルギーマネージメントシステム)の採用 - 太陽光パネルの設置
約4割のセブン‐イレブン店舗に設置済(2019年2月末時点)
約1割のイトーヨーカドー店舗に設置済(2019年2月末時点) - 環境対応トラックの活用(EVトラック、FC小型トラック)
- 従業員による省エネの推進(意識向上のための環境教育をおこなう)
- 店舗における省エネ設備の導入促進(LED照明、水素ステーションなど)
- 各店舗を訪問する車両をハイブリット車へ切り替え
東芝
東芝グループでは、国内外での事業所・工場をはじめ、事務所などのオフィスでも省エネを推進しています。
オフィスにおいてはこまめな節電を推進し、工場などでは生産率を向上させることでエネルギー使用量削減に取り組んでいます。
具体的には以下のような取り組みをおこなっています。
- 太陽光パネルの設置
- スクラバー循環ポンプのインバーター化による電力削減
循環ポンプにインバーター設置により、過剰な循環水を減らし、エネルギー削減 - カーボンニュートラルLNG導入
天然ガスの採掘から燃焼までの工程で発生する温室効果ガスを、生物多様性や新興国の貧困問題に寄与するプロジェクトへのCO2クレジットで、カーボン・オフセットをおこなう
4.まとめ
今回はカーボンニュートラルについて、各企業の具体的な取り組み事例についてご紹介してきました。
今後、世界的な目標に向けて、それぞれの企業が環境問題についても責任を持って取り組んでいくことは、必須といえます。
すぐに取り入れることは難しいことも多いかと思いますが、一歩ずつできることから進めていくことが大事です。
たとえばペーパーレス化を進めたり、業務を効率化することでエネルギー削減を図る、というようなことは、今すぐにでも取り組めることかと思います。
弊社のGO!!電帳というサービスでは、オフィスにおける書類を電子管理することで、業務効率化がおこなえることはもちろん、CO2削減にも貢献できます。サービスの中で、CO2削減量は一目でわかるようになっているため、取り組みのモチベーションの維持にもつながるかと思います。
ぜひ一度、ご検討いただければ幸いです。
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