「カーボンプライシング」とは何か?基本から解説!
近年、世界中で地球温暖化に向けた取り組みが行われているなかで、脱炭素社会に向けて「カーボンプライシング」が注目されています。今回は「カーボンプライシング」について基本から解説していきます。
1.カーボンプライシングとは?
カーボンプライシングとは、名前のとおり、カーボン(C:炭素)に価格づけを行うという意味です。CO2などの温室効果ガスには炭素原子が含まれるので、排出されたカーボンの排出量に比例した価格づけを行い、温室効果ガス排出量に応じて、排出者が費用負担を行います。
CO2を排出すればするほど費用負担が大きくなるので、温室効果ガスを排出する側の意識を変え、排出量削減に効果があると考えられています。
カーボンプライシングは主に「明示的カーボンプライシング」と「暗示的炭素価格」の2種類に分かれます。
明示的カーボンプライシングは、排出される炭素に対して、1トンあたりの価格づけを行うものです。一方、暗示的炭素価格は、排出量に対して直接価格づけをするのではなく、エネルギー消費量等に課税することによって、間接的に炭素≒温室効果ガス排出量に価格を課すという仕組みです。
明示的カーボンプライシング
政府が行う明示的カーボンプライシングの施策には主に「炭素税」「排出量取引」の2つがあります。
炭素税
「炭素税」は化石燃料を使用したときに排出されるCO2に対して直接課税することで炭素に価格づけをおこなうものです。
さまざまなCO2排出者に対して負担を求めることができるうえ、既存の税制との親和性が高く、行政コストも低く抑えた上でおこなうことができます。
排出量取引
「排出量取引」は、取引制度のなかで企業ごとにCO2排出量の上限を決めることで、上限を超過した企業と、下回る企業との間で「排出量」を売買するという仕組みです。
CO2排出量を権利として取引することで、実質的に炭素に価格づけがされるということになります。
この制度によって各企業は自社における費用対効果を考えて取引をおこなうようになるため、全体的としての排出量を減らすことができると考えられます。
上記の二つは政府が導入するカーボンプライスの制度ですが、それとは別に民間レベルでおこなうカーボンプライシングもあります。
インターナル・カーボンプライシング
政府の施策とは別に、企業が自社のCO2排出量を抑えるために導入する制度として「インターナル・カーボンプライシング」があります。
「インターナル・カーボンプライシング」では、自社で独自に炭素価格を設定することで、CO2排出量が新たな事業や設備投資をする際の判断基準の一つになり、また社内の意識を変えることにもつながります。
暗示的カーボンプライシング
暗示的炭素価格の施策として代表的なものは、「エネルギー課税」や「特定の製品・施設等に対する補助金や税制優遇」「固定価格取引制度」が挙げられます。
2.カーボンプライシングの現状
世界銀行の報告によれば、炭素税や排出量取引制度など、世界でカーボンプライシングを行なっている国や地域は、2021年時点で64あるとされています。(State and Trends of Carbon Pricing 2021)
2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標が設定されたことにより、カーボンプライシングの動きはより活発化し、この10年間で3倍以上の国と地域に広がっています。
The World Bank. 2021. “State and Trends of Carbon Pricing 2021” (May), World Bank, Washington, DC. Doi: 10.1596/978-1-4648- 1728-1. License: Creative Commons Attribution CC BY 3.0 IGO ※凡例の原文は英語で、筆者訳の日本語に差し替えています
(出典)https://www.asahi.com/sdgs/article/14650075#h19sl4o8dip31kltjq31az9at1zozmbv
ここからは、各国のカーボンプライシングの取り組みについて説明していきます。
海外の取り組み
(1)欧州連合(EU)
EUでは、世界で初となる排出量取引制度である「EU-ETS(欧州連合域内排出量取引)」が導入されました。
この制度の対象となるのは、EU加盟国とアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーで、域内の対象企業にはCO2排出量の上限が割り当てられ、その過不足分を、明示的カーボンプライシングの一つである「排出量取引制度」によって市場取引するという仕組みです。
発電、石油精製、製鉄、セメント事業などの業種が、現在対象となっています。
(2)中国
世界で最もエネルギー起源CO2排出量が多い中国では、2021年から「排出量取引制度(ETS)」を開始しました。
現段階では、石炭および火力発電を行う発電事業者のみが規制対象となっていますが、今後は対象事業者を拡大することが検討されています。
(3)フィンランド
フィンランドでは、1990年に世界で初めて「炭素税」を導入しました。
炭素税率は開始当初から段階的に引き上げて、エネルギー税制改革を行いました。
2020年時点での炭素税率は、熱利用税率と輸送燃料利用税率の二つがあり、税収は所得税の減税や、企業の社会保障費削減による税収減の補填などに使われています。
カーボンプライシングの先進国であるフィンランドでは、CO2排出量の削減を行いながら、同時に経済成長も実現しています。
日本での取り組み
ここからは、日本におけるカーボンプライシングの取り組みについて説明します。
(1)政府の取り組み「地球温暖化対策のための税(温対税)」
日本では、2012年に「地球温暖化対策のための税」として、国税として炭素税が段階的に導入されました。CO2排出量に応じた税率で、原油、ガス、石炭などの化石燃料に対して課税しています。
(2)自治体の取り組み「排出量取引制度」
自治体では、2010年から東京都が「送料削減義務と排出量取引制度」を実施しており、一定のエネルギー使用量以上の事業所を対象としています。また、2015年〜2019年度では、すべての対象事業所が総量削減義務を達成しています。
また、埼玉県でも2011年から、東京都の制度をモデルにした「地球温暖化対策計画制度」「目標設定型排出量取引制度」を導入しています。
3.カーボンプライシング導入による影響
ここまで解説してきたようにカーボンプライシングにはさまざまな方法があり、これからも世界中で広がりを見せていくことが予想されます。
CO2排出量の削減をすることは、地球全体の環境のために必要なことであるのは間違いありませんが、しかしそれとは別に、各企業や家庭にとってはどんな影響があるのかというのも気になるところだと思います。
ここからは、カーボンプライシングを導入することによって予想される影響について説明していきたいと思います。
家庭の場合
カーボンプライシングは、企業に対して費用負担を強いるものであるため、それが企業の製品やサービスに反映することが考えられます。
具体的には、CO2の発生にかかわる、電気やガス、ガソリンなどのエネルギーの高騰により、光熱費の負担が上がります。
光熱費は、所得によって使用量が大きく変わるわけではないため、値段が上がればそれだけ、低所得の家庭への負担が大きくなります。
一方で、太陽光発電などの再生可能エネルギーに対しては優遇措置がとられる可能性もあるため、各家庭で料金の安いプランに切り替えるなどの工夫を行うと良いでしょう。
企業の場合
企業にとっては、カーボンプライシングの制度は直接的に大きな負担になります。
炭素税などの直接的な負担はもちろん、設備投資の必要に迫られるなどの間接的な影響も出てきます。コスト増加による競争力の低下が懸念されます。
しかし逆に考えれば、カーボンプライシングをきっかけに企業としてCO2排出量の削減をはじめとした環境対策にいち早く取り組むことができるとも言え、企業としてのブランドイメージをアップさせることができれば、長期的にみれば競争力を上げることにつながるとも考えられます
具体的なCO2削減の取り組みとしては、たとえばペーパーレス化の推進が有効であると考えられています。ペーパーレス化の推進によって、業務効率化などの効果も生まれ、最終的には企業としての利益につながることとなるでしょう。
4.まとめ
今まで述べてきたように、カーボンプライシングにはさまざまな方法や影響があり、今後も世界中で広がりをみせていくことが考えられます。
脱炭素社会に向けて必要不可欠なことであるため、企業にとっては今後、ますます対応が求められていくことになるでしょう。
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