押印はなぜ必要?その種類や使い方、法的な力について解説
日本特有のはんこ文化ですが、契約書をはじめ、見積書や領収書には、なぜはんこがいるのでしょうか。
押印することの役割をはじめ、法律との関係、押印することの理由などを解説していきます。
目次
1.【押印】契約に使う印鑑はどんな種類がある?実印~銀行印など
「はんこ」や「印鑑」など色々な言い方がありますが、「はんこ」は主に道具そのものを指す言葉で、「印鑑」というのは押印したことによって紙に残る字や絵柄などを指す言葉で、微妙に意味の違いがあります。
場面によってどのようにはんこを使い分けるのか、解説していきます。
はんこの種類① 印鑑登録していない【認印】
実印と比べると簡単な作りになっているのが特徴の認印(みとめいん)。
印鑑登録をしていないもので、日常的な契約事に使用することの多いものです。
印鑑証明書で本人が押したことを証明したい場合には、認印ではなく実印でなければなりません。
はんこの種類② 印鑑登録がされている【実印】
認印は印鑑登録をしていないということで紹介しましたが、印鑑登録をしている印鑑を実印(じついん)と呼びます。
個人でも会社でも持つことが可能で、公的に認められた印鑑であるとされます。
字体が複雑になっているのは複製を防ぐためで、信頼性の高い印鑑という特徴があります。
信頼性が高いため、高額な請求のある取引など、大切な契約の際になることが多いです。
ちなみに会社の実印は印鑑登録を必ず行わなければなりませんので、その点注意しましょう。
日常の生活ではあまり使用しないはんこになります。
はんこの種類③ 銀行に届出をする【銀行印】
銀行に口座を持っていれば銀行印を持つことになります。
銀行に届出をする必要があり、口座の開設や振り込みなど、銀行との取引をする際に使用します。
「銀行印(ぎんこういん)」として新たに作るのではなく、実印や認印を登録するのが主流で、特に認印を届出するケースが主流です。
銀行印は口座開設のタイミングで登録するもので、決まった場所に押すだけでOKです。
そのため、銀行印だけを登録しに行くのではなく、口座開設と同時に行う手続きになります。
はんこの種類④ 会社に関係する【代表者印】と【社印】
「代表取締役印」といった字が会社名と合わせて刻印されているのが、「代表者印(だいひょうしゃいん)」です。
代表の人物が同意したことを表すものなので、会社の組織にとって大変大切な印鑑になります。
形が丸いことから、「丸印」とも呼ばれます。
会社設立のタイミングで法務局に登録をするため、すべての企業が持っているはんこです。
会社名だけが彫られていて、「角印」と呼ばれるのも、この社印です。
2.契約書に使う押印、どんな種類があるの?契印や消印など
ここからは、はんこを使用する場面に分けて、契印や消印など、押印の種類を説明していきます。
押印の種類① 署名欄の横に押す押印
契約書には署名をしますが、署名欄の右側に「契約することの意思を表す」という意味で、押印します。
契約書のなかでも大変大切な押印と言えるでしょう。
氏名と被らないように、離して押印します。
押印の種類② 複数のわたる契約書にまたがって押す【契印】と【割印】
契約書によっては、ページが複数になって本のように綴じてあることもあるでしょう。
その場合には、見開きになっているページの両ページをまたぐようにして押印することで、「正しくページが連続している」ということを表すことになります。
これを契印(けいいん)と呼びます。
契印をする場合には、必ず署名欄に押したものと同じ印鑑を使用しましょう。
そうすることで、当事者が契約書全体を承認したという意味になります。
ページ数が多く、見開きのところに複数の押印をすることが手間になる場合には、契約書全ページをテープで綴じた際の、テープと表紙を跨ぐように押印をすることでも、同じ意味を表現できます。
また、ページにはせずに複数部に分けるとき、各部を少しずらして重ね、重ねたところを跨ぐようにして押印します。
これによって複数部にわたって作った契約書が、互いに関係しあっているということの表現ができます。
これを「割印(わりいん)」といい、割印の場合には署名欄と別の押印でも構いません。
押印の種類③ 契約書本文の最後に押す【止印】
契約書の内容が後から不正に追加されることがないよう、契約書本文の最後に押すのが「止印(とめいん)」です。
当事者の誰かが押すことで完了しますが、署名欄と同じものを使用する必要があるということは注意点になります。
押印の種類④ 使用済みの収入印紙であることを示す【消印】
収入印紙の再利用を防止するという目的で押印するものを「消印(けしいん)」といいます。
署名に利用したものとは別の印鑑も使用でき、当事者の誰かが押せばOK。
収入印紙と紙面本体を跨ぐようにして押しましょう。
押印の種類⑤ 契約締結後に内容を訂正する際に使う【訂正印】
場合によって、契約を締結した後に内容や文言を訂正しなければならなくなることもあるでしょう。
そういった場合には、変更したことにより不要となった文言に二重線を引き、文言を削除。
その後追記することがあれば追記して、その箇所に訂正印を押します。
場合によっては「どれくらいの字を削除して、どれくらいの字を追加した」のかを書くケースもあるようです。
訂正印(ていせいいん)の場合には、当事者全員が署名欄と同じもので押印しますので、注意しましょう。
押印の種類⑥ 後の訂正に備えて押しておく【捨印】
契約書などの訂正について、本人が訂正したことを表現する訂正印。
しかし、前もって訂正されることを想定し、前もって押しておく押印として「捨印(すていん)」というものがあります。
捨印は訂正をしなければいけなくなっても、改めて訂正印を押さなくてよくなるので、訂正する度に訂正印を押さなければならない、という手間を省くことが可能です。
AさんとBさんの間で何度も修正をしながら書面を作っているとして、Aさんが捨印を押した場合、BさんはAさんの訂正印をもらうことなく書面の内容を修正することができるようになります。
しかし、大切な契約書などで捨印を押してしまうと、大切な事項についても相手方で修正をすることができてしまうので、データの改ざんなどをされてしまうリスクがあります。
契約書の冒頭にある余白のところに押すのが一般の押し方ですが、捨印を押しても良い契約書かどうかを判断してから押しましょう。
3.押印が契約書に必要な理由【どうして?】
実は、押印は契約をするときの絶対的な要件ということではなく、お互いの同意があれば契約は成立します。
とはいえ、日本にははんこ文化が定着していますし、「押印されている=同意している」という意味として、法的な観点以外にも「押印がされている」ということに意味があります。
ちなみに、押印がされていることによって「当事者の同意」を可視化することができますし、「二段の推定」も適用されます。
契約書には押印が必要なのか、押印が必要な契約書はあるのか、というところを見ていきます。
押印が必要な契約書もある?
記名押印と署名押印の方式では、押印がいります。
記名押印というのは、前もって印刷などで名前が記名されていて、その横に押印する方法です。
また名前を自分で書き、その横に押印をする方法である署名捺印の場合も、もちろん押印をします。
記名押印と比較すると、署名捺印の場合には「署名」と「捺印」の効果が生まれるため、より確実に契約を結びたい時には、こちらの署名捺印がおすすめです。
押印のない契約書でも力は発生する?
押印のない契約書であっても、本人同士が同意をしていれば、契約書として力を発揮します。
しかし、裁判などになった際には、なにかしら同意したことが証明できるものがあった方がよいと思われます。
そのため、押印でなくてもサインをするなど、お互いの同意を可視化できるようなものを用意しておきましょう。
押印があれば二段の推定が発生する
契約書の押印は基本的に任意であると解説しましたが、実は押印をすることによって「二段の推定」というが適用されます。
- 作成者の押印があれば、印影は作成者の意思に基づいて成立したと推定される
- 作成者の押印であれば、文書が真正に成立したと推定される
こうした二段構えによって、裁判などで契約が成立しているとして判断されます。
より確実に契約を有効なものにするためには、任意ではありますが、押印をすることで、リスク回避をすることができるでしょう。
4.印鑑・押印・はんこについての疑問点|電子印鑑でもOK?捺印の注意
最近では電子印鑑というツールも登場し、業務効率化の動きが進んでいます。
そんななかで発生する、押印やはんこについての疑問点を押さえていきます。
契約書の押印は電子印鑑でやっても大丈夫?
契約書への押印が必ずだということではないので、電子印鑑でもOKです。
しかし、電子印鑑の押印は偽造されやすいため、トラブルへの発展もしやすいと考えることができます。
電子署名法で「真正に成立した」と推定してもらうには、求められた要件をクリアした電子署名や電子印鑑が必須になります。
電子印鑑などを導入することも作業の効率化に繋がりますが、導入するからには法律上で力を持つものを導入しましょう。
フリーランスは屋号印でもOK?
繰り返すことになりますが、契約書への押印は任意であるため、フリーランスの方は屋号印を押してもOKでしょう。
取引先に確認してもよいかもしれませんが、屋号で取引をしているため、個人名で押印をした場合、取引先が屋号と違うことで混乱してしまうこともあります。
通常の見積書や請求書には屋号印を使用することも可能ですが、大きな取引では個人の実印を使うようにしましょう。
外国企業との取引はサインでの契約が通常の方式
はんこ文化は日本特有のものです。
そのため、外国企業との契約の場合には、サイン方式が一般に用いられるやり方です。
しかし、ただサインをしただけでは本当に本人がサインしたか定かになりません。
サインが本人のものであることを確認するために、サイン証明書などの証明になるものを用意して、前もって準備をしておくこともあります。
外国企業との取引が多い企業の場合には、「日本企業の取引」と「外国企業との取引」で契約の方式を別々に決めておいてもいいでしょう。
5.まとめ
道具の名前としての意味を持つ「はんこ」と、書面に残した字や絵柄を意味する「押印」や「印影」。
それぞれ色々な種類があり、もちろん場面によって使用するものは違います。
企業間での契約書に押す押印は任意となっていて、必須のものではありません。
とはいえ、二段の推定という効果を発生させるためには、押印を求めることが必要になります。
はんこ文化は日本特有のものですが、DX化やペーパーレスに向けて脱はんこの動きは必要性が高まります。
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