GXって何?〜基本から取り組み事例までを解説〜
最近、GXという言葉を耳にすることがあるかと思います。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、気候変動の主な原因であるCO2などの温室効果ガスの削減と、企業の競争力向上を両立していこうとする取り組みのことです。
この記事ではGXの基本から最新の取り組み事例までを解説していきます。
1.GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略です。
近年、地球全体で気候変動が問題となっており、この環境問題の主な原因となっている温室効果ガスの排出量を抑えることが、世界的な課題であるといえます。
この世界的な流れを、政府や企業が経済成長の機会とプラスにとらえ、経済活動と温室効果ガス削減の両立を図っていくために、経済社会システム全体の変革を目指すことをGXといいます。
2.なぜ今GXが注目されているのか?
今、GXが注目されている理由としては以下のようなことが考えられます。
地球温暖化が進んでいる
近年、気候変動による大規模な水害や森林火災などが増発しています。
2019年夏に欧州を熱波が襲い、熱中症で多くの死者が出ました。また水不足や、干ばつによる穀物の不作も問題となっています。
酷暑の影響はアフリカ大陸ではさらに深刻で、今後の気温上昇が産業革命前と比較して1.5度以上に達する場合、熱中症で死亡する人の数も多くなると考えられます。
中南米でも干ばつや、気温上昇による森林火災が起きています。また蚊が媒介するデング熱などの感染症も今後増加していくと考えられています。
アジアでも同様の感染症の増加に加え、ヒマラヤ山脈の麓の地域を中心に、突然の洪水に見舞われるリスクが高まっています。気温上昇によって山頂部の氷が融解し、岩の多い部分に水が溜まっていくと、その周囲の岩が崩れた際に一気に水が噴き出し、下流地域に流れ出すためです。
またアジアの南部では豪雨災害にも警戒が必要になっています。これにより多くの人々が住居の移動を余儀なくされることになるでしょう。
このように地球温暖化の影響は年々、深刻になっていっているのです。
2050年カーボンニュートラル宣言
このような深刻な状況を受けて、2020年10月、菅義偉首相(当時)は所信表明演説で、2050年までにカーボンニュートラル(※1)の実現を目指すことを宣言しました。
このとき、菅首相は同時に、温暖化対策がもはや経済成長にとって制約にはならず、積極的に温暖化対策をおこなっていくことで、産業構造自体を変革し、経済社会にとって大きな成長につながることを示唆しました。
具体的な実行策としては、2020年12月に経済産業省によって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」がまとめられ、14の重点分野における実行計画が掲げられました。
さらに2021年6月には、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(※2)」が発表され、さらに具体化された取り組みが挙げられています。
このように、政府としての方針や具体的な実行策がはっきりと示されたことによって、各企業にとってGXへの取り組みを積極的におこなう流れが生まれたといえます。
※1 カーボンニュートラル : CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を「全体としてゼロ」にすること。
https://goden.jp/columns/sdgs/columns26.html
※2 経済産業省HPより「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました」
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005.html
GXが重点投資分野の一つになった
さらに、2022年6月に岸田文雄政権で閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中では、GXが「重点投資分野」の一つに挙げられています。
その中の取り組みの一つとして、脱炭素社会を目指してGX投資を増加させるため、政府資金で民間を支援する「GX経済移行債(仮称)」が検討されています。これにより、今後10年間で150兆円規模のGX投資を実現する狙いです。
また、新たな金融手法で世界からもESG資金を呼び込むため、「GX実行会議」を新設することも検討しています。
3.政府の取り組み:GXリーグとは
ではここからは、政府の具体的な取り組みについてみていきましょう。
2022年7月に、岸田内閣によって設置された「GX推進会議(※3)」では、「日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策」や「それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップ」についてを主な論点としていく方針が示されました。
2022年2月には「GXリーグ」の設立が発表されました。GXリーグとは、カーボンニュートラルの目標達成を機会に、企業としての競争力を高めつつGXを実現していくための施策です。
経済産業省によれば、産官学が一体となって、経済社会システム全体の変革のために、新たな市場創造のための議論や実践を行う場であるとしています。
GXリーグを通し、企業の成長や生活者の幸福と地球環境への貢献が同時に実現されることを目指しています。
※3 内閣官房「GX実行会議(第1回)」資料(PDF)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx\_jikkou\_kaigi/dai1/siryou3.pdf
※4 経済産業省「GXリーグ基本構想」
https://www.meti.go.jp/policy/energy\_environment/global\_warming/GX-league/gx-league.html
4.企業の取り組み
ここまでは政府の取り組みについて説明してきました。ではGX推進は企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?またGX実現のための各企業の取り組みをご紹介していきます。
企業がGXに参加するメリット
GXに向けた公的予算の増加がおこなわれるため、企業にとってはGXに参加することで企業活動に必要な資金をより多く得ることができます。
さらに、GXを推進している企業というイメージは、消費者から見た企業のブランディングイメージを向上させ、売上の増加のほか、優秀な人材獲得をしやすくなる、といったメリットが考えられます。
海外企業の取り組み
海外企業の先行事例として、まず有名な3つの企業の事例を挙げていきたいと思います。
Amazon
Amazonでは2019年9月に、「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)(※5)」が設立されました。
パリ協定よりも10年早い2040年までに、温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げており、2025年までに自社の事業を全て再生可能エネルギーで行うための取り組みを進めています。
具体的には、配送のために電気自動車を導入することによる二酸化炭素排出量の削減(年間400万トン)をおこなったり、再生可能エネルギーへの大規模投資も準備しています。
※5 Amazon「気候変動対策に関する誓約」
https://www.aboutamazon.jp/planet/climate-pledge
Googleでは、2030年までにすべてのデータセンターや事業所でのエネルギー使用を、24時間365日二酸化炭素を排出しないカーボンフリーエネルギーへ転換することを発表しました。
この目標を達成するために、約50億ドル以上を投資して、太陽光発電や風力発電などのカーボンフリーエネルギーの利用量を拡大したり、AIを活用した電力使用の最適化を図るとしています。
これにより年間で100万トン以上の二酸化炭素排出量を削減でき、同時に2万人以上の雇用の創出が可能になるとも見込まれています。
※6 Googleはエコもムーンショット。2030年までに24時間炭素排出ゼロの意気込み #GoogleIO
https://www.gizmodo.jp/2021/05/google-io-sustainability-goals-2030.html
Apple
Appleでは2018年時点で、データセンターなどで使用する電力を風力発電などのエネルギーでまかなうことに成功し、カーボンニュートラルを達成しています。
パリ協定よりも20年早い2030年までに、製造工程の全てでカーボンニュートラルを実現することを表明しており、具体的に行うアクションも挙げています。
たとえば、再生材料を利用した製品設計や、エネルギー効率を挙げて電力使用量を削減するほか、森林保護などにも取り組んでいます。
※7 Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束
https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/07/apple-commits-to-be-100-percent-carbon-neutral-for-its-supply-chain-and-products-by-2030/
国内企業の取り組み
海外の企業だけでなく、国内企業でも既にGXの取り組みは始まっています。
経産省の2021年12月時点のまとめによると、国内の200社以上の企業が「2050年までのカーボンニュートラル」を目指すことを宣言しています。
トヨタ
トヨタは2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」という取り組みを発表しました。
実現に向けて6つのチャレンジを挙げていますが、そのうち次の3つがGXへの取り組みに関連しています。
- ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ:製造から走行・廃棄まで、製品のライフサイクル全体で二酸化炭素排出をゼロにする
- 新車CO2ゼロチャレンジ:グローバル新車の平均二酸化炭素排出量を削減する
- 工場CO2ゼロチャレンジ:グローバル工場の二酸化炭素排出量をゼロにする
特に、自動車製造においてCO2排出量が多くなりがちな「塗装」「鋳造」の工程で、重点的に脱炭素化を進めていくとしています。
※8 トヨタ「6つのチャレンジ」
https://global.toyota/jp/sustainability/esg/challenge2050/
NTT
NTTで使用する電力量は、日本の総電力消費量の約1%にのぼり、デジタル化の流れが進めば、この消費量はさらに増加すると考えられています。
NTTでは経営方針を転換し、再生可能エネルギーへの投資をおこなうことで、再生エネルギーの比率を、2030年までに30%まで増加させることを発表しています。
具体的には、全国に所有する7000以上のビル内に蓄電池を設置したり、社用車を電気自動車に切り替えて蓄電することで、再生可能エネルギーの電力を自治体に供給できるようにすることも目指しています。
※9 NTT「グリーンソフトウェアから勧める脱炭素の動き」
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2022/0303/
東京電力
電力業界においても、エネルギーの供給側として、主力電源を火力発電などの化石燃料主体の発電から、再生可能エネルギーへの転換が求められています。
2022年3月、東京電力はGXリーグへの参加を表明し、発電時に二酸化炭素を排出しない「ゼロエミッション電源」の開発などを進めていく方針を明らかにしました。
主要な電力会社として政府が掲げるカーボンニュートラルの目標達成をリードしていくため、グループの総力をあげて取り組みを進めていくとしています。
※10 東京電力「『GXリーグ基本構想』への賛同について」
https://www.tepco.co.jp/press/release/2022/1694228\_8712.html
5.GXとDXの関連性
ここまで政府や企業におけるGXの取り組みについてみてきましたが、GXと似たような言葉でDX(デジタルトランスフォーメーション)というものがあります。
DXとは、デジタル技術によって人々の生活をよりよい方向へ変革するという意味です。
2018年に経済産業省が、DXを「デジタル化によって製品やサービス、ビジネスモデルだけでなく、業務プロセスや組織そのものを変革させる」ことと定義しました。
政府が掲げる2050年カーボンニュートラル戦略でも、デジタルインフラの拡大が課題として示されています。
たとえばクリーンエネルギーのみを利用して製品を作るには、高度なデジタル技術が必要になります。そのほかにも、デジタル技術による業務フロー改善などを、オフィスや製造現場でおこなうことができれば、エネルギー消費量の削減につながります。
つまり、GXを進めていくにあたり、デジタル技術を活用していくDXは必要不可欠ということになってくるのです。そのため、各企業ではまずDXを進めていくことから始めて、GXの取り組みに参加していくことが必要になると考えられます。
6.まとめ
今回はGXの基本や取り組み事例、さらにDXとの関連について解説してきました。GXの取り組みへの参加は大規模なものになり、必然的に大企業が中心の取り組みになりがちですが、その前段階であるDXであれば、中小企業や個人事業であっても取り組んでいくことができるのではないでしょうか。
弊社のGO!!電帳というサービスでは、オフィスにおける書類を電子管理することで、企業におけるDX推進をサポートすることができます。またCO2削減量なども一目でわかるようになっているため、GXの取り組みにもつながります。
ぜひ一度、ご検討いただければ幸いです。
3ヵ月無料‼