カーボン・オフセットとは?
近年、地球温暖化防止や脱炭素社会への取り組みなどが進む中で、「カーボン・オフセット」という言葉を聞くことが増えたのではないでしょうか?
今回の記事では、カーボン・オフセットについて、基本から解説します。
1.カーボン・オフセットとは?
カーボン・オフセットとは、「カーボン(carbon)=炭素」を「オフセット(offset)=相殺する」という意味です。
近年、環境問題への取り組みの中で、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減することが求められていますが、人間が日常生活や企業活動を行ううえで、全ての排出量を0にするというのは、現実的には難しい問題です。
そこで、削減できなかった排出量分を他の場所での植林事業や再生可能エネルギー事業などに投資することで、埋め合わせるという考え方があります。これを「カーボン・オフセット」といいます。
カーボン・オフセットと「排出権取引」の違い
温室効果ガスの排出を削減するための方法のひとつに、「排出権取引(排出量取引)」があります。これは、排出されるカーボン(=二酸化炭素)の量に価格づけをする「カーボンプライシング」の施策のひとつで、企業間でCO2排出量を権利として売買するという仕組みです。
この制度によって、それぞれの企業は、自社における費用対効果を考えて取引をおこなうようになるため、全体としての排出量削減につながると考えられています。
カーボン・オフセットと排出権取引は、一見似たような考え方のように思えます。
しかし、排出量取引は国や企業にとっての「義務」として排出枠が定められているのに対して、カーボン・オフセットはあくまで「自主的」におこなう取り組みで、他者から強制されるものではないという点で、両者は異なっています。
2.なぜカーボン・オフセットを行うのか?
では、なぜ今、カーボン・オフセットをおこなうのでしょうか?
近年、自然災害の多発や、それによる経済活動への被害など、地球温暖化による影響は大きなものとなってきています。
2015年に採択された「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇幅を、産業革命以前と比較して2℃以内におさめることが目標として掲げられており、この目標を達成するためには、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を2010年時点より40〜70%程度減少させなければならないこともわかっています。
地球温暖化の進行を止めるためには、国を超えて協力し合い、温室効果ガスの削減に努めなければならないのです。
しかし、どんなにそれぞれの国や企業で排出削減の努力をしていても、それぞれの生活や経済活動によって排出されるCO2を完全にゼロにすることはできません。
そこで必要となってくるのが、「カーボン・オフセット」の仕組みなのです。
3.カーボン・オフセットの流れ
カーボン・オフセットの取り組みは、以下のような流れでおこなわれます。
- 1.排出されるCO2の量を算定
- 2.CO2削減に取り組む
- 3.どうしても排出されてしまうCO2の量を排出権などを用いて埋め合わせる
(参考)環境省 我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)の公表
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/guideline.html
このようにカーボン・オフセットをおこなううえでは、まず自分たちでできる限りのCO2削減に取り組むことが大切になります。
自分たちで減らせるはずのCO2排出量を減らさずに、ただお金で埋め合わせればよいという考え方でカーボン・オフセットをおこなうのは、環境問題にとって悪影響です。
4.カーボン・オフセットの取り組み方法
カーボン・オフセットには次の5つの取り組み方法があります。
1.オフセット製品・サービス
製品やサービスの製造者が、製品やサービスのライフサイクルの中で排出されるCO2をオフセットします。
(例)工場から排出されるCO2の一部をオフセット
2.会議・イベントのオフセット
スポーツ大会やコンサート、国際会議などの大きなイベントの主催者が、イベントの開催に伴って排出されるCO2分をオフセットします。
(例)イベント会場の照明や空調などでの電気使用から排出されるCO2の一部をオフセット
3.自己活動オフセット
組織の事業活動など、自分たちの何らかの活動において排出されるCO2をオフセットします。
(例)自社のオフィスでの電気・ガスの使用で排出されるCO2の一部をオフセット
4.クレジット付製品・サービス
製品やサービスを製造・販売する際に、製造者やサービスの提供者が製品やサービスにクレジットを付けて、製品やサービスの利用者の日常生活でのオフセットを促進する取り組みです。
製品やサービスにクレジットがついていると、購入者は製品の購入やサービスの利用だけで、地球温暖化防止に貢献することができるのです。
(例)CO2吸収のクレジット付きの製品を購入してもらって、日常生活分のCO2の一部をオフセットします。
5.寄付型オフセット
サービスやキャンペーンなどをおこなう際に、消費者に対して売上の一部をクレジットに活用することを宣言したうえで、イベントをおこなうこともできます。
参加者や購入者に対して環境に配慮した製品やサービスを提供でき、購入するだけで地球温暖化防止活動に貢献してもらうことができます。
5.カーボン・オフセットの課題
カーボン・オフセットの活動にはまだまだ課題もあります。
1.CO2削減量の算定の信頼性を確保するのが難しい
カーボン・オフセットを行うにあたっては、CO2の排出量の算定が正確におこなわれていなければなりません。
その信頼性確保のために、政府はこの調査のための第三者機関を設けています。
しかし、それを健全に運営していくためには、カーボン・オフセットをする側のモラルに左右される部分もあり、難しいというのが現状です。
2.CO2削減を行わないことの正当化に使われてしまう可能性がある
本来カーボン・オフセットというのは、自分たちでできる限りのCO2削減をしたうえで、埋め合わせをおこなっていくものですが、自分たちで環境問題に向けた設備投資をおこなうより、カーボン・オフセットで埋め合わせるほうが安く済む、と考えられてしまうことがあります。
そのような企業は、自分たちで環境整備をする努力をおこなわないため、CO2削減につながらない可能性もあります。
カーボン・オフセットをおこなうにあたっては、これらの問題を解決していくことがこれからの課題といえるでしょう。
6.まとめ
今回はカーボン・オフセットについて解説してきました。
カーボン・オフセットの取り組みは大々的なものとなり、投資額が大きくなってしまうことが多くあり、中小企業にはなかなか難しいといった声も聞かれます。
しかし、身近なオフィスにおけるCO2削減であれば、中小企業や個人事業であっても取り組んでいくことができるのではないでしょうか。
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